Hanakoya Blog
第22話 ~25年前のシミの記憶~
第22話
~25年前のシミの記憶~
先日、お客様から子ども用トレンチコートのシミ抜きをご依頼頂きました。
「福永さん、どうしても綺麗にしたいコートがあるのですが、一度見てもらえませんか?品物は25年前の古いものですが、思い入れがあるもので綺麗になれば孫に着せたいと思っています。ただ、近所のクリーニング店を数店まわって相談したのですが、どこも取れないと言われました。大丈夫でしょうか。」
シミは時間が経過すると取れにくくなるものなので、25年前のシミともなると私も取れるか不安です。
実際にお持ちいただいたものを見るとカビによる変色と食べこぼしの古いしみなど、普通に洗っただけでは取れないシミばかりです。
どうして25年前のものを綺麗に?そう思ってお客様に尋ねると、
「これは娘の小さい頃に買ってあげたもので、汚れてしまってクリーニングしても取れなかったので、そのままタンスにしまっていたものです。ただ、その娘が結婚して孫が生まれて今、丁度同じような背丈なのでもう一度よみがえれば着せてあげたいと思っています。なんだか孫を見ていると娘の小さい頃を思い出してしまって・・・。それとこの染みは娘が怪我をしたときに付いた血液のシミです。」
ご依頼品は三陽商会のトレンチコートです。
バーバリーなども扱っているメーカーなので素材や縫製もしっかりしていてシミが綺麗になればまだまだ着用できるものです。
カビ跡や血液の古いシミを除去するためにかなり強い薬品を使用しますので、薬品に素材がどこまで耐えられるか、素材の状態を確認しながら段階的にシミを除去していきます。
後日、綺麗になったコートをお孫さんと一緒にお引き取りに来られました。
「○○ちゃん、ちょっと着てみて。」
ジャストサイズでコートを羽織ったお孫さんは、当時の娘さんのように見えたのでしょうね。
「お母さんの小さい頃とそっくりね。」
と微笑んで帰られたのが印象的でした。