Hanakoya Blog
第4話 受け継がれていくもの~震災に遭ったバーキン~
震災の自粛ムードが落ち着き、少しずつお客様が戻ってきたある日、被災地である宮城県からバッグが送られてきました。しっかりと梱包された箱の中には一通の手紙と共に泥まみれのバーキンが入っていました。手紙には母親から譲り受けたとても大切にしているバッグが津波で流され、汚れて形も崩れてしまったとの旨。なんとか甦らせてほしいとご依頼頂きました。バッグは汚泥が革に染みついている状態です。海水を吸ったせいか白く塩分が浮き出て、油のような黒ずみも全体に確認でき、震災の悲惨さを物語っていました。自然災害で汚れたバッグのご依頼は過去にも何度かありましたが、津波で海水に浸かってしまったものは初めてのケースです。
今回のように難しいアイテムの場合は、私を含めた作業スタッフ全員でバッグを囲み、作業スケジュールを確認します。汚れ具合や素材、構造などによって作業見解が変わってくるのです。
3人の職人によって甦ったバッグは無地にオーナー様のお手元に届き、後日お礼の手紙が届きました。「福永さん、この度は有難うございました。甦ったバッグは娘にも渡せるように大切に使用します。」バッグは震災の教訓と共に世代を超えて受け継がれていくのでしょうね。
平成23年10月8日掲載