Hanakoya Blog
第11話 受け継がれていくもの~30年前のモンクレールを漂白~
先日、お客様から30年前のモンクレールのクリーニング依頼を頂きました。依頼品に同封されていたお手紙の内容をご紹介します。「福永様、いつもモンクレールのクリーニング有難うございます。今回お願いしたいのは30年前のモンクレールで状態を見ていただければと思いますが、大変汚れています。押し入れにしまったまま、久しぶりに出してみるとカビのような汚れと食べこぼしのシミがたくさんついています。実はこのモンクレールは父親から譲り受けたもので最近はあまり着ていなかったのですが、久しぶりに着てみようと出してみたところ、あまりにも酷い状態だったのでご相談させて頂きました。完全に綺麗にはならないかと思いますが、また着てあげられるような状態になればと思っております。よろしくお願い致します。」
依頼品を確認したところ、全体にカビによる変色と古い食べこぼしのシミが多数見受けられました。この場合は通常のウエットクリーニングでは汚れは殆ど落ちませんので、スタッフと協議した結果、漂白加工を施す事にしました。ただ、漂白しすぎると羽毛のボリュームが無くなり、酷いシミの箇所は破れてしまうリスクがあります。その為、完全にシミを落とさないでボリュームと生地の状態を見ながら加工を施しました。後日、メールを頂きましたのでご紹介いたします。
「福永様、この度は有難うございました。先程、ダウンが届きました。正直感動です。事前に伺っていた通りシミは完全に落ちませんでしたが、気にならない程度に綺麗になって全体的なくすみも取れ、本来の明るい色合いになっていました。ボリュームも多少なくなると伺っていましたが、新品同様にふっくらしてとても満足です。これなら父親の前でも堂々と着れますね。この度は本当に有難うございました。」
モンクレールのシミは殆ど除去できるのですが、今回のように完全に取れないシミも稀にあります。私たちはシミを取る事だけを考えるのではなく、素材の風合いやシルエット、発色などトータル的に一番良い状態に復元する事を最優先いたします。
平成24年5月12日掲載