Hanakoya Blog
Categoryリビングかなざわ掲載記事
第9話 学生服の染み抜き~母親の記憶~
クリーニング店に生まれた私の幼いころの記憶ですが、春休みになると学生服のクリーニングがたくさん出て、毎日工場で夜遅くまで学生服を洗っていた母親の姿が思い浮かびます。夏休みや冬休みも学生服の依頼は多かったと思いますが、春休みの学生服は普段よりも多く出ていた印象があります。普段は週末になると私の学生服をその日のうちにクリーニングしてくれていたのですが、この時期になると後回しにされていました。でも、毎回思っていた事ですが、新学期の時はいつもよりも学生服が綺麗になっていました。普段は洗っただけでボンドの白いシミなどが取れていないままだったのですが、ちゃんと染み抜きで綺麗にして、ほころびていたズボンの裾なども縫い直して、短かった丈は長くなっていました。
今でも店頭で学生服のご依頼があると、当時の新学期の晴れやかな気持ちを思い出します。Hanakoyaでは学生服をご依頼の際は通常のクリーニングでは取れないボンドのシミなども綺麗にしてお返ししています。改めて考えてみれば、子どもに新しい学年の新学期を綺麗な学生服で迎えてほしいといった母親の愛情なのかもしれませんね。
平成24年3月3日掲載
第8話 ムートンブーツ、雨や雪の日は履かないで!
この時期はムートンブーツを履いた女性を良く見かけますが、同時にシミになったというご相談も非常に多いです。シープスキンブーツとも呼ばれるこのブーツは羊の毛皮で作られていて、非常に温かく通気性にも優れ、秋冬の定番ブーツとして人気の高いアイテムです。温かいため、雪の日なども履きたくなるものですが、このブーツは水を吸いやすく、濡れてしまうとその部分だけ色が変わってシミになります。慌てて自宅に帰って水で洗って更に酷くなったケースなども・・・。
普通に洗うとシミになってしまうこのブーツは特殊な洗剤を使用し、表面洗浄で除去していきます。仕上げには今後のシミ予防として撥水加工を施します。
どんなアイテムでもそうですが、特にムートンブーツはアフターケアよりも事前にシミになりにくくするプレケアが重要になります。市販の防水スプレーを30cmほど離れた所から均等に噴霧すると効果的です。付け過ぎるとシミになるのでこちらも気をつけてください。ご使用後は馬毛ブラシでブラッシングすることで綺麗になります。
先日、お客様からお礼のメールを頂きましたのでご紹介します。
UGGムートンブーツの雨水のシミ抜きを依頼致しました、○○です。
本日、ケア頂いた商品を受け取りました。
防水等の手入れをしていない状態であった為、
シミの状態もひどく、半ば諦めていたのですが、
仕上がりを見て、びっくりしました。
とてもきれいで、シミの残りも全くないように思います。
一度買ったものを、長く履けることを大変うれしく思っており、
長年はいている皮のブーツや鞄のケアでも、今後利用させて頂きたいと感じています。
通常よりはやくお仕上げ頂いたようで、ほんとにありがとうございました。
おかげで、またまだ寒そうな今週末から履けます。
防水をしっかりして、丁寧に長く履こうと思います。
平成24年2月4日掲載
第7話 よみがえる形見の品~天国へ届け!弟のモンクレール~
先日、1通のメールが届きましたので、一部抜粋してご紹介させていただきます。
「ご相談ですがモンクレール?のダウンジャケット(と読むのでしょうか?自分はブランド品にうといのですが、良い物みたいですね)の染め直しについてお聞きしたくご連絡させていただきました。以前、弟が着ていたものですが、先日亡くなり、形見としてもらったのですが、入院していて1年以上、日当たりの良い部屋に吊るし放置していたため日焼けがひどくついてしまいました。おしゃれな弟でしたので、きれいにして使ってやりたいと思いご連絡させていただきました。自分はアルバイトしながら学生やっている身分なので高額な費用は捻出できませんが、ご相談までにご連絡させていただきました。」
「亡くなった弟の形見を綺麗にして使ってあげたい・・・。」その想いに共感し、綺麗にしてお返ししたい。いつも以上にそんな気持ちです。後日、届いたダウンは弟さんの長かった入院生活を物語るかのように激しく変色していたため、スタッフで協議した結果、濃いブラウンへの染め替えをご提案させていただきました。染め替えは私を含む2人の職人の手によって施されます。依頼品に取り付けてあるカルテの備考欄には「ご依頼人の弟さんの遺品。」と明記してあります。私や職人はいつも以上に作業に気持ちが入ります。
後日、お客様からお礼のメールを頂きました。
「早速、確認させていただきました。色合い、仕上げとも大変きれいになっており、とても驚きました!!感謝、感激です!この度は大変お世話になりました。有難うございました!」
弟さんの思い出の詰まったモンクレールがよみがえり、兄へと受け継がれていく。「亡くなった弟の形見を綺麗にして使ってあげたい・・・。」そんなお兄さんの想いは天国の弟さんにきっと届いているはずです。
平成23年1月14日掲載
第6話 クレームから生まれたハイパー撥水コーティング
以前から撥水加工には自信があったつもりでした。店頭には「超撥水」と立派なポスターを掲げてスキーウエアなどの撥水加工を多く承っていた時、あるお客様から「撥水が効いてない」とクレームを頂きました。実際に水を掛けて試したところ、しっかりと水をはじいていたのですが、部分的に若干水が浸み込む個所がありました。「厳しいなぁ・・・」という気持ちでしたが、「この程度なら超撥水なんて看板を掲げるな!」とお叱りを受けました。
お客様は今までクリーニング店に撥水加工を依頼しても、満足のいく効果が得られなかったため、わざわざ遠方からお持ちいただいたようで、新品時の撥水性を期待されていたそうです。「結局、クリーニングすると撥水が低下する事なのですね?」「・・・・」私には言葉が出ませんでした。実際に撥水性を向上するために使用するフッ素樹脂はドライクリーニングの溶剤によって洗い流されるため、そのあとに再度、フッ素樹脂を繊維に吸着させるのですが、現状の撥水剤では新品時のような効果をだすことができなかったようです。
使用していた撥水剤のメーカーに問い合わせても、曖昧な返答だったので、他のメーカーに成分調査を依頼して驚きの調査結果を目の当たりにしました。成分のなかには撥水効果を低下させるものも含まれていたようです。クリーニング業界は価格競争が激しい為、単価を下げるための苦肉の策だったようです。メーカーの研究室に我々の要望を満たしてくれる撥水剤はないか試行錯誤を繰り返し、ようやくたどり着いたのが現在の撥水剤です。
オリジナル配合の撥水剤「ハイパー撥水コーティング」は、特殊なバインダーによって生地に吸着させ、その後の熱処理で本来の撥水性を実現しました。現在、スキーウエアやフィッシングウエア、トレンチコートには強力な撥水加工を施し、ダウンジャケット、スウェードブーツ、キャンバスバッグなどデリケートな素材には光触媒を配合して生地を保護する加工を施しています。こだわりの撥水加工「ハイパー撥水コーティング」はクレームから生まれたHanakoyaの宝物です。
平成23年12月3日掲載
第5話 女性靴修理職人
Hanakoyaでは靴の修理には特別な想いをもって取り組んでいます。私たちが考える靴修理のコンセプトは履物としての機能の修復と仕上がりの美しさを両立させて、お客様にお渡しすることです。そして、その二つを両立させる大切な知識は、その靴の構造を理解する事とその靴を造ったデザイナーの意思を継ぐ事と考えています。靴の構造を理解することはお客様に安全に履いていただく事につながります。数十kgの体重を支え続けるボトム部分は想像以上に強度を必要とします。その靴をお客様のご要望通りに修理して良いか否か、また、どの様に修理すればより安全に履けるか。構造を理解する事はとても重要です。大切な知識のもう一つ、デザイナーの意思を継ぐ理由は、お客様がその靴を気に入っている可能性が極めて高いからです。出来る限りオリジナルに近い修理を基本としますが、例外も存在します。明らかに修理をしてはいけない靴や、強度を優先させる為、仕上がりの美しさを諦めて頂く場合もあります。Hanakoyaではこのコンセプトのもと、女性修理職人によって様々な靴が修復されていきます。女性ならではのきめ細かい修理を心掛けています。
平成23年11月5日掲載